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高松コンテンポラリーアート・アニュアルvol.05「見えてる風景/見えない風景」

高松市美術館の年に一度開催される現代アートのグループ展「高松コンテンポラリーアート・アニュアル」(瀬戸内国際芸術祭2016連携事業)。展示スペースに入れ子となる一対の L 字の仮設壁を立て、その内側に福島とメキシコのそれぞれの山の頂から観た風景画のシリーズを展示。それら互いの風景の地平線が空間内でつながり、壁の外側にはそれぞれの山の稜線で線を引いた記録映像を展示した。

会期:2016年10月8日(土)~11月6日(日)
会場・主催:高松市美術館
出展アーティスト:流麻二果、ドットアーキテクツ、谷澤紗和子、伊藤隆介、来田広大
展示協力:黒飛忠紀(幸せ工務店)

撮影:木奥惠三
提供:高松市美術館

展覧会ステートメント

私は、土地・場所と人との関係を俯瞰的に探るために山をフィールドワークの拠点とし、そこから臨む風景を地図として捉え今ここにいるという認識を立ち上がらせることを作品制作の基準としている。
歴史や記憶、場所や領域をめぐる事象について考えるとき、私はそこに必然的に介在する、ものの見方あるいは眼差しに着目することを促すために、ある種の「境界」とされる領域からみた俯瞰的な地図を、イメージとして顕在化させることを試みる。 そのイメージは、周囲との関係や自らの立ち位置をも俯瞰的に捉えることを可能にし、世界との距離を確認することに繋がるだ ろう。
福島に住んで震災を経験し、1年後に京都に移ったことで、震災をいう大きな出来事に対する見方が距離とともに変化した。こ のことが、人と場所や領域、ものの見方について考えるようになった最大の契機である。
そして今、メキシコに住んでいる。
10年前にも留学していたが、その頃と比べて街が一段と変化していることに、まず驚いた。自由貿易の拡大により外国資本の 高層ビルが建ち並び、それに比例するかのように社会の格差は拡がり続けている。華やかな都心から少し離れた山の裏側には、 荒廃が進む地方の農村から移住してきた人々が暮らす住居が密集している。メキシコシティのスラム街は、この10数年で劇的 に増加したという。
あらゆるメディアが爆発的に普及している現在、身体は何をどこまで知覚し、経験しているのだろう。遠くのことを近くに感じ るために、そしてその間にあるものを確かめるために、地平線にチョークで線を引く。
「こことそこ」との距離を測るかのような儚い線は、土地の記憶に触れながら同時代を生きるための地図を描く。
我々を分断している境界線はどこに引かれているのだろうか。