KODAI KITA

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流れ山 flowing mountain

2010年に東京藝術大学大学院美術研究科油画技法材料を修了した来田広大(きた・こうだい/1985年・兵庫県生まれ)は、2013年『Birds-eye view』(Gallery PARC)、2014年『FUGAKU HYAKKEI』(ギャラリー昨明・福島)の個展をはじめ、2015年には『視点の先、視線の場所(来田広大/吉本和樹二人展)』(京都造形芸術 大学 Galerie Aube)を開催や、『これからの、未来の途中』(京都工芸繊維大学美術工芸資料館)に参加するなど、現在までに京都・福島・東京をベースに作品制作・ 発表を続けています。
近年、来田はおもに「山」をモチーフに、チョークを用いた絵画制作に取り組みながらその展開を試みています。
場所を選ばず地面に絵画性を持たせるための画材として選ばれたチョークによる絵画制作は、子どもの頃に「何かを想いながら」道路に落書きしていた感覚をもとに、その後に様々な支持体とイメージによって試行錯誤されてきました。たとえば2013年の個展『Birds-eye view』(Gallery PARC)では、自身がかつて実際に登ったり見たりしたことのある北アルプスなどの山々を俯瞰したイメージを描いた作品《Bird’s-eye view》や、ある場所から見渡したパノラマの山並みを描いた作品《Landscape of 360°》を発表。また、2015年の『これからの、未来の途中』では、京都と滋賀の県境に位置する比叡山をモチーフに、会場屋外の地面に巨大な「山」 を描き出しています。
「何かに想いを馳せながらそれぞれの記憶を辿り、足跡を残すように場に介入していくことは、定着した固有のイメージを改めて捉え直し、その像を更新していくことではないだろうか。」と語る来田は、これまでに実際に登った山に思いを馳せながら、その時の印象や記憶を手がかりに記憶の中の山を描きます。しかし、描くに連れてチョーク粉の飛沫や伸び・擦れによる流れるような線と面は、次第に遠く朧げな“山のようなモノ”のイメージともなって表れてきます。
そして、鑑賞者にとってこの“山のようなモノ”は、遠い昔に体験した雪山登山の景色であり、テレビで見たことのある遠くの山であり、あるいは雲の流れる空であり、 荒れる海の波しぶきであり、単なる子どもの落書きでもあるかもしれません。しかし、鑑賞者は確かに絵の前で「遠く(何か)に想いを馳せる」ことを喚起され、それぞれの記憶や認識は目の前の絵画によって更新されるのではないでしょうか。
本展では、過去に取り組んできた建物の屋上や床に直接チョークで描く行為をギャラリー空間内でおこないます。床に広がるチョークは鑑賞者が歩くたびに干渉を 受け、日々その像を変化させます。また、そうしてかき消され、掠れ、流れた線を受けて来田は会期中にこの絵画を更新し、描かれる山は常に流れ続けることとなります。
(Gallery PARC ディレクター)

会期:2015年12月9日(水)-12月22日(火)

会場:Gallery PARC