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「旅のかたち」いちはら×メキシコ 月出工舎国際交流企画展

「旅のかたち」いちはら×メキシコ 月出工舎国際交流企画展 

“Las Formas del Viaje” Ichihara × México Exposición Internacional de Intercambio en ARS TSUKIDE

会期:2022年2月11日(金・祝)― 27日(日)/5月3日(火・祝)― 8日(日)(会期を二期に分けて開催)

会場:月出工舎(千葉県市原市 旧月出小学校)

出品者:アブラハム・ゴンザレス・パチェコ(画家/メキシコ)、カノン・ベルナルデス(写真家/メキシコ)、山本聖子(美術家/福岡)、吉本和樹(写真家/京都)、来田広大(美術家/京都)、荒井規向(文化人類学者・ラテンアメリカ研究者/メキシコ)

本展キュレーション:来田広大

本展ディレクター:岩間賢(美術家、月出工舎統括ディレクター)

【展覧会概要】

江戸時代初期(1609年)フィリピンからメキシコに向かうスペイン船サン・フランシスコ号が嵐のため外房の御宿沖で難破、乗組員・乗客317名は地元御宿の漁民達に救助され、また御宿の領主で大多喜城主本多忠朝の手厚い保護と徳川家康の好意を得て全員がメキシコに帰還しました。これを機に日本とメキシコとの友好親善400年の交流が始まったと言われています。

月出工舎では、このような歴史的背景をふまえ、世界的なパンデミックの中でも国際交流の取り組みを模索し、第2回目となるメキシコとの国際交流展「旅のかたち」展を開催いたします。

「旅」とは、今の私たちにとってどのようなものなのでしょうか。何処の地へ向かうこと。狩猟や巡礼などを目的とした身体的、精神的な移動だけではなく、特定の地へ想いを馳せることもひとつの「旅」かもしれません。本展は、国籍や文化、表現分野の異なる現代のアーティストによる作品に加え、ラテンアメリカの先住民コミュニティにおける「贈与」を研究する研究者によって構成されています。

展覧会初日には服部浩之氏によるトークでは、様々な旅のかたちとそこから生まれる表現について、場所や時代を跨いで幾つかの事例を紹介しながら多角的に考察します。

そして最終日の岸本(下尾)静江氏と出展者である荒井規向氏のトークでは、そのサン・フランシスコ号の乗客でフィリピン総督だったドン・ロドリゴの辿ったグローバルな旅から、 メキシコ先住民コミュニティにおける贈与研究のフィールドワークの旅を通じて、私たちの現在地点について考えます。

また、2014年から地域住民とアーティストが共に創り上げている月出工舎コレクションも一般公開し、cafe-TSUKIDEYAで営みをしているヤマドリ珈琲さんでは、本展に合わせたドリンクやスイーツをご用意していますので、展覧会と合わせてお楽しみください。

岩間賢(美術家、月出工舎統括ディレクター)

「旅のかたち」いちはら×メキシコ 月出工舎国際交流企画展 月出工舎(千葉県市原市) 全体展示風景(2022)

美術施工:平塚知仁 撮影:吉本和樹

Art technician: Tomohito Hiratsuka photo: Kazuki Yoshimoto

《歩荷 Bokka》 月出工舎(千葉県市原市) 展示風景(2022)

Statement

「贈与」を研究する文化人類学者の荒井氏のフィールドワークの資料から、メキシコのオアハカ北部山地でアガベを収穫する映像を見た。

そのアガベを運ぶ姿は、自身のリサーチのための登山や学生時代の山小屋での仕事(歩荷など)とよく似ており、私は日本でもアガベを背負って運び(その重さを再現し)、彼らの場所の風景に少しでも触れることはできないだろうかと考えた。

共通する重さや運ぶという行為を通じて、それは何のための重さであるのかを身体を使って考える。

そして同時に移動が困難である現代の「旅」の在り方への応答として、遠い地へ想像力を働かせることはできないだろうか。

※アガベはメスカルという蒸留酒の原料

【研究発表】「いま贈与論を考える ~チアパスとオアハカにおける先住民の生活実践と贈与の可能性~」荒井規向(文化人類学/ラテンアメリカ研究者)

「旅のかたち」展の出展者である荒井規向による研究発表動画。 メキシコのチアパスとオアハカの先住民コミュニティでのフィールドワークを通じて「贈与」を研究した成果発表・研究報告です。 本動画は展覧会場でも公開されており、関連する研究資料としてテキストも寄せています。 下記リンクと併せてご覧ください。 https://note.com/mezcalero/n/n33af2b5…

荒井規向 Norihisa Arai  文化人類学/ラテンアメリカ研究者、メキシコ国立自治大学 博士|メキシコ在住 1986年三重県生まれ。メキシコシティ在住。2011年大阪大学外国語学部中南米地域文化専攻卒業。2016年メキシコ国立自治大学哲文学部ラテンアメリカ研究科修士課程修了。2022年同大博士課程修了予定。多様な代替経済のあり方に、贈与・互酬の原理が大きな役割を果たしていることを認識し、メソアメリカやアンデスの先住民コミュニティにおけるフィールドワークを通じた互酬的社会経済関係の比較研究を行うことで、贈与論の今日的意義を問う試みを続けている。

 贈与とは、一言で言えば、貨幣や市場での交換に基づかない贈与 – 受容 – 返礼のモーメントから形成される、コミュニケーションの形態の一つである。マルセル・モースによる理論化以来、特に人類学では頻繁に議論されてきたテーマであり、東日本大震災を経て現在はコロナ禍渦中にある日本でも、この概念のもつ射程に再度注目が集まっている。今回出展している論考と研究発表動画は、2014年から2020年にかけて、チアパス州シナカンタンの先住民自治コミュニティとオアハカ州北部山地にてフィールドワークを行い、主に参与観察とインタビューを中心に、これらの場所で先住民たちがいかに制度的に贈与というものを可能にしているのかを調査してまとめたものである。実際に現地にて経験的に理解することで、その多くが都市生活を送る我々がどのように贈与を可能にして行くのかを探っていきたいと考えている。

荒井規向「旅のかたち」展 ステートメントより