マウン展
マウン展 mountain
会期:2024年4月9日(火)ー29日(月祝)
会場:KOBE STUDIO Y3 [4F gallery](海外移住と文化の交流センター内/神戸市)
出品作家:来田 広大 Kodai Kita / 杉山 卓朗 Takuro Sugiyama / シュミット ニコール Nicole Schmid /
山村 祥子 Shoko Yamamura
山のふもとのマウン展
本展覧会にお誘いした来田広大(アーティスト)はおとなりの淡路島出身で登山などのフィールドワークを制作過程に取り込んで全国的に活躍しており、杉山卓朗(アーティスト)は市内在住で自宅にアトリエを構えて緻密な絵画を精力的に制作しています。ニコール・シュミット(グラフィックデザイナー・ タイポグラファー)は神戸芸術工科大学卒、同校で教鞭を執っていた経験があり、山村祥子(アーティスト)はKOBE STUDIO Y3のオープンスタジオ事業に参加して日常的に神戸へ通いながら制作を続けています。
住む場所や活動するジャンル、フィールドを越えて、神戸という街を起点に交わることになる4名をこの街が持つ特徴である「山」をテーマに表現することで紹介したいと思います。山は、風景としての意味だけではなく「人生山あり谷あり」「塵も 積もれば山となる」といった比喩表現にもよく用いられます。4名がそれぞれどのように「山」を捉えるのか。それは会場となるKOBE STUDIO Y3の入る海外移住と文化の交流センターが諏訪山や再度山への登山口に位置することからも影響を受けます。
1Fのカフェsumicoで開催中の山で使う手ぬぐい展、3Fスペースでの高木伽偉個展とあわせてどうぞご覧ください。
築山有城(彫刻家・C.A.P.代表)
Statement
私は、旅や移動、また山でのフィールドワークを拠点にしながらこれまで作品制作を行なってきた。
それは、人と場所の関係を探るための方法として、自身の身体的な経験を通じてその場の歴史や記憶を辿っていくような行為でもある。
今回出品している絵画作品は、北アルプスでの登山を通じて制作した《crawl》、メキシコの太平洋沿岸に位置する港を描いた風景《アカプルコの海》、出身地である淡路島の海岸から神戸が見える風景を描き、最終的に絵をその海に沈めた《Re: Landscape》。そしてそれらの場所(メキシコ以外)でのフィールドワークを記録した映像《山と海でのフィールドワークの記録》になる。
神戸という街が北側に六甲山地、南側は大阪湾という土地環境であることから、山と海を緩やかに接続するようなイメージで構成している。
そのイメージによって、山の雪解け水が川となって海へ流れ、水蒸気になってまた山に還っていく自然の循環のように、風化しては立ち現れる不明瞭な人の記憶、そしてその場所の移り変わる風景の記憶に触れることはできないだろうか。
加えて、この建物は元々ブラジルへの移民収容施設だったことから、神戸港から出航する移民船が同じ中南米のメキシコにも寄港していたらと妄想すると、ここから旅立った移民の人たちはもしかしたらアカプルコの海も見ていたのかもしれない。(実際は、主に東南アジア、アフリカを通る西回りの航路だったのでメキシコには立ち寄っていないようだが、ブラジルからメキシコへ移住した人はいたそうである)
山に登って山頂から見渡す眺めように、海を漂う記憶を運ぶ船のように、自分たちがいる場所と遠くの場所とのつながりに思いを寄せることができれば。
来田広大
photo: Emiri Otomi