あわいを歩く
個展《あわいを歩く Roam around―AWAI》
会期:2023年10月16日(月)―10月28日(土)
会場:MU東心斎橋画廊 3F(大阪)
Statemant
2023年春、四国のお遍路のいくつかのルートを歩き、そしてそのあと和歌山の高野山に登った。本展は、お遍路、高野山での旅の経験をもとに、道中に目にした風景を旅の記録として制作した「歩行の絵画」シリーズで構成している。歩くリズムや呼吸、その場に流れる空気、どこからか吹く風に身を委ねること。それらの経験から作品を通して鑑賞者の歩く経験や記憶の中にある何かに触れられるような「歩くことでしか得られない風景」が身体性を伴ったイメージとして立ち現れてくることを願う。
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初めて人類が二足歩行で歩いたのが約350万年前。生きるためにより良い環境を求めて進化と移動を繰り返し、世界各地に文明や文化を築き上げてきた歴史の上に我々はいま立っている。
「人はなぜ歩くのか」 ― その大きな問いに突き動かされるように、私はこれまで数えきれないほどの人が歩いてきた「道」の上をただひたすら歩いている。2本の足で振り子のように単純な動作を繰り返す歩行には、その道において時折「私」という存在がふっとなくなるような瞬間が訪れる。風景に溶け込み、その道に歩かされ、瞑想するような気持ちになったとき、「あわい」という言葉が頭に浮かんできた。「あわい」とは、「間」や「何かと何かが交わるところ」といった意味で、英訳できない日本語特有の言葉であり、その土地の風土や風景によって生まれてきた言葉なのだろう。こことそこ、昼と夜、光と影、私とあなた、此方と彼方…。
それらが交わるとき、「あわい」に沿って歩いたとき、祈りにも似た歩行の先には何が見えるのだろうか。
2023年4月
個展《あわいを歩く Roam around―AWAI》 MU 東心斎橋画廊(大阪) 展示風景(2023)
photo: Kazuki Yoshimo
「あわいを歩く(お遍路・高野山編)」 個展に寄せたエッセイ note